2012年11月2日金曜日

日弁連「地球市民集会―いま、憲法『改正』を考える~憲法を変えたいのは誰か~」

質問に応える伊藤真氏(右)、孫崎享氏(左)

 夫婦で参加聴講してきました。盛りだくさんの内容でしたが、相変らず松元ヒロさんは冴えておりました。「憲法くん」「安保くん」はお見事でした。伊藤真さんの話はもう少し聴きたかった、時間配分が短すぎました。同じく、孫崎享さんの話も尻切れトンボに終わったような気がします。

◆「地球市民集会―いま、憲法『改正』を考える~憲法を変えたいのは誰か~」日弁連主催日時;2012年11月2日(金)18時~20時40分、場所;弁護士会館2階講堂「クレオ」(千代田区霞が関1-1-3 地下鉄丸ノ内線・日比谷線・千代田線「霞ヶ関駅」B1-b出口直結)、参加費無料・事前申し込み不要、内容;1)DVD上映「戦争をしない国日本」、2)エンターテインメント松元ヒロさん、3)報告及び講演①基調報告:伊藤真氏(日弁連憲法委員会副委員長)「憲法をめぐる危険な動きと、日弁連の立場」 ②講演:孫崎享氏(元外務相国際情報局長)「日本の生きる道-平和的手段の模索-」

◆(11月7日付)「クリスチャントゥデイWeb」より
2日、弁護士会館(東京都千代田区)で日本弁護士連合会(日弁連)主催の地球市民集会が開催され、日本国憲法を尊重する地球市民300人超が参加した。集会の基調報告では、現代日本社会で生じている憲法改正をめぐる危険な動きと日弁連の立場と題して日弁連憲法委員会副委員長の伊藤真氏が講演を行った。
詳しく報道されています☞http://www.christiantoday.co.jp/article/5369.html

政党、各界が改憲案を公表…日本国憲法の基本原理改めて振り返るべき

 2007年安倍政権時代に、憲法改正の手続きを検討するための憲法審査会が設置され、その後憲法改正に向けた議論が急速に進んできた。今年4月に自民党は日本国憲法改正草案を正式に発表した他、それと前後して「みんなの党」も憲法改正案を発表、大阪維新の会や国政復帰を表明した石原都知事も憲法改正の必要性を主張している。

 このような流れについて、日弁連副会長の高崎暢氏は、「今後ますます改憲の動きは加速し、かつ一層重要な問題となってくるだろうと思う。日本国憲法の基本原理の実現のために憲法問題に取り組んでいきたいと思っている」と述べた。
  
  日弁連では、2005年の第48回人権擁護大会において、「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言(鳥取宣言)」を採択した。鳥取宣言では、憲法9条の戦争を放棄し、戦力を保持しないという徹底した恒久平和主義は、平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有するものであることが確認されていた。2008年10月には「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言(富山宣言)」を採択し、日弁連が世界の人々と協調して基本的人権の擁護と世界平和の実現に向けて取り組むことの決意が表明されていた。

 日弁連憲法委員会副委員長の伊藤真氏は同集会において「憲法改正をめぐる危険な動きと、日弁連の立場」と題した講演を行い、改めて日本国憲法の世界平和における重要性を強調した。

 伊藤氏は「第2次世界大戦後日本が朝鮮戦争、ベトナム戦争に関与してきたものの、直接日本が戦争の加害者、被害者になるということはなかったことは、まさに日本国憲法前文と9条が機能していることの証である」ことを改めて伝えた。 

 伊藤氏は鳥取宣言の内容について、「立憲主義を基盤としてこれからの日本、憲法を考えていかなければならない。立憲主義は権力者の権力の濫用に歯止めをかける。もともとは国王の横暴に歯止めをかけるものとして生まれたものだが、民主主義社会では民主的正当性をもつ活動家による権力行使であったとしても、そこに憲法で歯止めをかけなければならないという意味合いをもつ。多数派の思いに従う民主主義の要請と、憲法できちんと歯止めをかけなければならないという立憲主義の要請は時にぶつかりあうものである。通常の法律は国民に向けられているが、憲法というのはあくまで国に向けられている。立憲主義を今一度しっかり国民の皆さんとの間で共有したい。個人の尊重、法の支配が大事にされている。人間社会における価値の尊厳は個人にあり、すべての人間の自由と平等が尊重されるべきである」と伝えた。

決められない政治への不満が改憲の動き促進か

 また2008年に採択された富山宣言について「多くの国で平和を語る憲法があるが、それを人権としてとらえるのは日本の憲法だけ。国の平和だけでなく、一人一人の人権としてとらえている。憲法9条を守ることは、私達の国の憲法上の責務でもある。海外における武力行使、集団的自衛権の行使を禁止している。全世界の市民を視野に入れた憲法を私たちは持っている」と説明し、改憲の動きが進む今日の社会情勢について「ところが残念ながら憲法改正の動向がさまざまな場面から起こり始めている。尖閣諸島、竹島領土問題など、一般市民の皆さんの中に、決められない政治への不満を『憲法を改正すればなにかすべてがうまくいくのではないか』というそのような雰囲気が少しずつ醸し出されてしまっている。護憲派が政治の中で力を持ちにくくなってしまっている」と懸念の意を表明した。

 今年に入って民主党、自民党、たちあがれ日本、みんなの党、大阪維新の会などさまざまな政党において集団的自衛権を行使し、米国と一体となって軍事行動を取れるようにしていく憲法改正に向けた主張が行われるようになった。伊藤氏は「明文改憲とは別に解釈改憲の動きも非常に由々しい状況になりつつある」と述べ、集団的自衛権の行使について、憲法を一定の解釈をすることで行うことができるようにする動きに強い懸念を表明した。
  
 解釈改憲は憲法違反

 伊藤氏は解釈改憲の動きについて、「解釈改憲とは、憲法で禁じているものを政府の解釈で行使できるようにしようというものであり、立憲主義に反するもので明らかに憲法違反である。改憲には明文改憲と解釈改憲の2種類の憲法改正の方法があるかのごとくメディアでは報道されているが、いわゆる解釈改憲と呼ばれるものは、憲法に違反することを解釈の名の下で行おうということであり、明らかに憲法に違反するものである」と伝えた。

 また憲法上疑義のある「秘密保全法」についても、「民主国家における情報統制が正に進もうとしている。そういうことが可能になってしまうと、民主主義の名の下で人権侵害、平和の破壊が生じてしまうという、かえってたちが悪くとても危険な状況が生じてしまう。改憲を改正したいのは一体誰であり何が狙いなのか?集団的自衛権の行使というのは、本当に私たちが自分たち、自分たちの国を守るためなのかということはしっかりと考えなければならない」と伝えた。

日弁連、日米軍事一体化の流れに懸念

 伊藤氏は特に最近の日米軍事の一体化の流れに懸念を示し、「日弁連として、21世紀を輝かしい人権の世紀とするため、世界の人々と協調して、基本的人権の擁護と世界平和の実現に向けて取り組むということを宣言している。地球市民、憲法の前文にも『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して』とある。日本憲法9条、平和は一日本国だけの問題ではなく、地球市民全体の問題である。今後も世界の人々と協調し、憲法の価値を実現していくことを進めたいと考えている」と述べた。
  
  続いて元外務省国際情報局長の孫崎享氏が「日本の生きる道―平和的手段の模索―」と題した講演を行った。孫崎氏は尖閣諸島問題について、平和的に解決する道を模索するべきであることを、これまでの日中間における同問題への取り組みを振り返って説明した。

 また孫崎氏は最近の日本が右傾化してきていることに対し強い懸念を示し、「日本はものすごい危険な方向に行こうとしているのではないかと思う」と伝え、日本の右傾化に拍車をかけているのが尖閣諸島問題であると指摘し、「尖閣諸島問題は棚上げにしておくべきである」との意向を伝えた。
日本の右傾化を懸念

 孫崎氏は1979年5月31日の読売新聞の社説で、「尖閣諸島の領有権問題は1972年の国交回復時にも、昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、いわゆる『触れないでおこう』方式で処理されてきた。つまり日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決を待つことで、日中政府間の了解がついた。これが、共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府の歴とした約束ごとであることは間違いない。約束した以上はこれを順守するのが筋道である」と書かれていたことを紹介した上で、「今、この発言をする新聞はない。多分、する政党もない。日本はどうなってしまったのだろうか?なぜ今日我々は全く違う方向に行ってしまったのか?それは多分日本がものすごい勢いで右傾化しているからではないか。自分の主張にものすごい関心があるが、相手の主張にはほとんど耳を傾けない、多分それが国としての右傾化ではないか」と懸念を伝えた。

 また集団的自衛権行使の動きについて、「日本で今起こっていること、原発、増税、TPP、オスプレイの問題、すべてある意味で『まやかしの議論』を行っていて、一番本質のことを正確に話していない」と述べ、集団的自衛権行使が国連の精神に反する動きであることの説明を行った。

 集団的自衛権行使は国連憲章に反する動きである

 国連憲章では、集団的自衛権は誰かに攻撃されたときに初めて行動を取れることが定められている。孫崎氏は、「基本的には、国連で考えていることは、いかなる国の主権も尊重し、それに対して行動を取らないということ。では今やろうとしている集団的自衛権の行使はなんなのか?冷戦が終わった後の米軍の国際戦略と関わっている。冷戦が終わって、ソ連という脅威がなくなった。その時の米国にとって最大の脅威は日独の経済力であり、米国には二つの選択があった。軍事をやめて経済にシフトするか、もう一つは、せっかく世界一になった軍事力を使って米国の利益を保持していくか、結局は後者になった。ソ連という脅威はなくなったときに、米国はイラン、イラク、北朝鮮のような不安定な国々が大量破壊兵器をもっているので、これが世界秩序にマイナスなので、国際環境を改善するために軍事行動を取るという戦略に出るようになった」と説明した。

 その上で集団的自衛権の行使が認められ日米の軍事協力が極東の安全保障から世界中に展開し、国際的安全保障を改善するためという名目で軍事行動を米国と一体化して行うようになるとき、「相手から攻撃をされて初めて行動をとるのではなく、自分のほうから攻撃に行って相手を変える。それで起こったのがイラク戦争であり、アフガニスタン戦争である。『国際的な安全保障、環境の改善を図るため』というのは、必ずしも正当化できない理由によって米国、西側の軍が出て行くということ。米国がいう国際的安全保障の改善というものは、その動機が必ずしも正しくはない可能性があるし、その後の状況も正しくはない可能性がある」と懸念の意を伝えた。

 また日米安保条約批准時に国民から大きな反感を買った岸信介政権について孫崎氏は、「今振り返ってみると、安保条約は少なくとも今の自民党に比べると、全く違うプラスの面を持っている。日米安保条約では国連憲章に違反することはひとつもしないと言っている。集団的自衛権は日本に攻撃があったときには、日米双方が自分の国の憲法に従って行動を取ると言っている。地域法定は安保条約にぶら下がっている。安保条約はあの当時においては、米国の意向に反するものを敢えて作ったのだと思っている。そのような岸さんの動きに懸念をもった米国が、ちょうど『アラブの春』と同じように『民主化』というスローガンのもとに岸さん潰しにかかったのではないか」と一定の評価を与えた。

 孫崎氏は「いずれにしても今の日本は集団的自衛権というもので、非常に変な方向に行こうとしていて、それを後押ししているのが尖閣諸島の問題。これはどういう問題なのかということの位置づけをしっかりしておかないと、尖閣諸島の問題を巡ってどんどん変な方向に行ってしまう」と警告した。

領土問題、平和的解決法を真剣に考えるべき

 孫崎氏は尖閣諸島問題について「我々はいかに平和的にこの問題を解決していくかを考えていかないといけない。いろいろな方策があると思う。領土問題で争うことによって失うものを懸念するより、領土問題を超えて協力することで得るものを考えることがとても重要。領土問題を離れて物事をとらえ、日中間でどこが悪くなったのかを考えてみる必要がある。尖閣の問題は『棚上げ』という立派な解決方法があったのにそれがひっくり返された。日本の憲法を守る平和を愛する者として、一つ一つの個別の問題についてどのように平和的な手段があるかということを考えていかなければならない。ヨーロッパではドイツとフランスの間で、アルザス・ローレンヌ地方の領土問題があったにもかかわらず、それを乗り越えて協力している。日本と中国、何で軍事紛争が起こりそうな状態になってしまっているのか、もう少し真剣に我々が考えてみる必要があると思う」と伝えた。

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