2011年3月31日木曜日

ようやく


 つれあいの母には妹がいる。岩手の農家に嫁いだので腰が曲がっている。この人は顔立ちも性格も義母に少しも似ていない。その叔母から連絡があった。明日から大船渡線が気仙沼まで開通するらしい。テレビにも出ていないから最新の情報のようだ。明日の早朝には一関にいるはずだから、交通手段の選択肢が増えるのはありがたい。    

 今日は晴れているが突然春の嵐になったりする変わりやすい天気だという。実際にそうだ。日が照れば春の日差しで暖かい、雲行きがおかしくなると寒々とする。つまり、東北はこの寒々とした朝晩であろうことが想像される。  

 私の郷土ではあまりみられないのだが、つれあいの東北地方ではみな屋号をもつ。つれあいの父方も母方も兄嫁もみな岩手県南部の中山間部にルーツを持つ。祖父が開けた港町気仙沼に出てきて身を起こした。それでつれあいはそこに生を得た。    

 今度の未曽有の被害に遭遇してその親戚たちがいち早く立ち上がった。母方の親戚、父方の遠い親戚(本家だという)、兄嫁の親戚、姪の婿の親戚(陸前高田にもかかわらず高台のところらしく難を逃れた)、一族の親戚縁者たちが駆け付けてくれたらしい。  

 灯油とガソリンこれが不自由な中、そんな中を駆け付けて支援をしてもらっているらしい。往復して市内を駆け巡ったらそれだけで夜中から並んで手に入れた限定的なガソリンを使ってしまうにもかかわらず。一泊二日でひきとられお風呂にもいれてもらえたらしい。  

 町はところどころライフラインが復旧しつつある。日増しに変わる。    

 昨日の朝いちばんに義姉から伝言が入っていて平服で来てほしいと。もとよりそのつもりだ。あまりにも同じ境遇の人々が多すぎて、両親を一度に失ったこと、家族・親類たちがあの大きな災害を蒙ったこと、なにか遠く過ぎ去ったことのように錯覚する。本人はそういうことはないのだろうが…。  

 駆け付けられずにいじいじしていたが、心が晴れやかだ。深夜バスでようやく被災地へ行ける。    

 桜が咲いた。花桃の先っちょが咲いた、こら、もう咲いたか。これから始まる連続テレビドラマのヒロインは「太陽の陽子」というらしい。うちの陽子さんは、花桃の咲くのを見ずに逝ってしまったよ。こういうことを言うとまたうちのお母さんが泣いてしまう。    

 帰ってきたら4月だから、カレンダーをもうめくっておく。私たちには未来しかない。

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