2010年8月14日土曜日

あの夏の思い出


 東京の一流のデパートで金にいとめをつけずに買ってあげたいと思うことがある。それも老舗のデパートで。ゆったりとした靴売り場を横目に見てふとそう思った。ただ、つれあいにはいやだと言われるだろうとも思った、デパートの値札では落ち着かないから。
 昨日の昼休みにぶらりと訪ねて行ったら催事場で古本市をやっていた。随分と揃っている。常日頃、本のリサイクルショップで流行り本だけに良い値がつき、良書が二束三文同然で扱われるのを快く思っていなかった。古本屋さんの本は大切に扱われているようでほっとする。好事家の、マニアの、学術のどの本も、作品集も全集も尊重されるように流通してほしい。堅くて真面目な本を読まなくなったのだろう、刊行されて久しい貴重な本が二束三文になっているのが嘆かわしい。

 マイカーのワンボックスカーを運転して、家族揃って夏休み旅行の九十九里から帰る、その途上のラジオのニュースで知ったと思う。渥美清さんが亡くなっていたことを。96年8月のことだった。何を買うまでもなく、偶然目に入った古本のアサヒグラフを買い求める。前の持ち主もファンだったのだろう「お別れする会」の新聞切り抜きが挟まっていた。8月13日のことだったらしい。

 何の因果かお盆は休むことができない。それで忙しい。「ボクはモーレツとヤスウリはやめましたぁ」と心で叫んでいても詮無きこと。

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