2010年7月2日金曜日

再会初対面


 「嵐の気仙沼」というNHK仙台放送局がつくった番組を録画して観た。題名からして、いったいどんな中味なのだろうかと思った。大型台風が襲来して三陸沖に操業していた各地の漁船が一斉に気仙沼港に避難してくる。漁師たちの一日を追った重層的なドキュメンタリー。放送文化基金賞を受賞した番組、なるほど秀作だった。小学校のころ「さんまの水揚げ日本一」と習った。それは往年の話で、すっかりさびれているが「嵐の気仙沼」の一日だけはまるで往時の入港の賑わいであるという。
 そのさんま水揚げの地位をおびやかし追い抜いたのがずっと南に位置する女川港である。その漁港の仲買の邦雄さんとはもう20年来の付き合いだ。電話や手紙を通じてのみだけれども、家族ぐるみの交流みたいなものをしていたが、私以外は会ったことがなかった。妻どうしは初対面で、私もご無沙汰して久しい。

 邦夫さんは自分のところの、魚の目利きや加工については自信をもっている。実際に消費地市場では名誉あるブランドを保っている。そうして、漁船を買い支えている。邦夫さんが送ってくれるさんまはとにかくおいしい。刺身で食べる。一箱単位なのでいろんなものにして食べる。ほかでは買えなくなるほどの確かなものをいただく。ただし、鮮度・脂ののりに合わせるので何時送ってくるかわからない。来ると大慌てになる。最近は小箱にしてほしいとそれとなく伝えざるを得なくなった。以前は10kg箱だったが、時代の流れで5kg箱もできるようになった。大きなサイズを送っていただくから、10kg箱で40尾ぐらい入っている。

 猫島の帰りに泊りがけで訪ねて行き夫婦どうしで初めて会った。ずっと以前にこの日を予約していたのだが、夫婦で行くよというのがピンときていなかったようだ。邦夫さんは舌が肥えている。ご夫婦でやっている構えはなんでもない居酒屋さんで、とてもおいしい魚をいただいた。本当においしいもの、これに出遭うと人生の楽しみが増える。もちろん、おいしくいただける相手がいることが大事なことだけれども。楽しみにしていた夜が過ぎた。

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