2010年5月7日金曜日

冷凍野菜


 冷凍野菜というと、安い中国産凍菜で普及したと考える。1980年代は中国の人件費といえばただみたいに安かった。土や泥洗い、下ごしらえ、剥き、カットどれもこれも手間ひまのかかる作業で、なかなか機械化ができず、問屋制家内工業的な(昭和の内職のような)、農家の大変な手間とひどく安い賃金で下処理がされ、それが集荷され冷凍加工場に持ち込まれ「冷凍野菜」としてパックされることから始まった。当時、野菜はまだ家庭の台所で調理するのが当たり前で、すぐに普及とはいかなかったが、「下ごしらえ要らず」「生ゴミが出ない」ということが利点となり、徐々に普及し今ではすっかり食品売場の主力商品となっている。供給する中国でも一大食品産業として成長した。集約型圃場での農産物生産を背景に、大規模で集約的な冷凍加工場で生産されるようになった。
 今では冷凍食品としての適性のある、ほうれん草、小松菜、さといも、かぼちゃ、ポテト、コーン、いんげん、えだまめなどがひろく普及した。アイテムはもっと拡大しつつある。「あれば便利」だったことから「なくてはならない」食品になりつつある。そして、農作物としての出来不出来や個体差、野菜としての特性(どくとくの匂いや味)も忘れ去られ、また野菜を目利きしたり下処理を経験したりすることもなくなって、まるで工業製品のような画一的品質が求められるようになった。生鮮野菜を知っていれば常識であることや些細なことが、パックに入った冷凍野菜の世界では通用しなくなり「苦情」「不安」の山となりつつある。
 さて、一時期、中国製品の残留農薬検出や毒物事件などの不祥事や不信感があって、一挙に冷凍野菜のマーケットが国産農産物原料に殺到し、原料価格が高騰した。国産原料コストではそれが適正な価格だったが、冷凍食品としての製品価格の“値ごろ”に適合せず、あれほど足りなかった原料の在庫がだぶつき始めた。そうして、ついには大幅な値下げを量販店から求められるようになった。国産の冷凍野菜を支えているのは北海道と九州である。なんとか「国産」を頑張って生産し私達の食卓に供給しているのは、主にはそういうところである。
 この夏、市場原理が作用して国産は値下げあるいは特売競争にさらされる。

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