2010年1月21日木曜日

那覇の裏町の猫


昔、実家には愛猫がいた。当時は残飯を与えており栄養も何も考えなかった。家を締め切ったところで、猫は自由に出入りできた。初めて家に電気掃除機が来た(買った)とき、愛猫はとてもこの音を怖がった。

昼休みにネコを飼っている人に訊いてみた。彼は40を過ぎているが独身でお母さんを扶養して一緒に住んでいる。「ホントにかわいがるのなら、“家ねこ”にすることです。」とぴしゃりと言われた。外に出ると事故に遭う。病気をもらってくる。ノミやダニももらってくる。なるほど、ならば貴方の飼い猫はメス猫かと訊けば、そうだという。去勢をしてあげることです。トイレもいいものが今は売っています。

猫が車に轢かれて死んだ話はいくらでも見聞きした。車を運転していてもひやっとすることがある。言われてみればみな、猫を外にださないようにしている。妻殿の実家も今はそうだった。

那覇の裏街を歩けばそこここに猫がたむろしていたのが印象に深かったのは猫好きのためだけではない。1月にしては温暖だったのと、それに似合うように猫が外にいてのんびりしていたのが、近頃私の近所では見かけない風景だったからだろう。

かつての沖縄戦ではどこもそこも戦禍に見舞われた。平君の家は那覇の海辺の一等地にあったそうだが、戦のおかげで一家が離散した。じいさんもおじさんたちも死んだ。生き残ったおやじさんが帰ってきたときには他人が住んでいたそうだ。この辺だったんだと以前案内してくれた。当時の猫たちはどうやって生き延びたのだろうとも、ふと思った。掃除機の音をあれほど怖がったネコは、四基エンジンの大型爆撃機や戦闘ヘリの騒音をどう聞いているのだろう、とも。

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