2009年11月28日土曜日

満ちゃん


 人懐っこい性格でみんなから「満ちゃん」と呼ばれた。外語大でドイツ語を習得し、「モーやん」(西郷輝彦が主役で演じた70年代の関西の人気テレビドラマ。猛烈に働いて立身出世する浪花の商人の物語。)のような働きをもとめる商社にはいり、世界を股にかけて活躍した。言語学を学んだ教養から人類の歴史にも詳しかった。南米出身のご婦人と恋に落ちスペイン語も習得した。小さくてかわいい白人の奥さんだった。仕事は熱心なうえに誠実で同い年だったので仲良くなり、あるとき我家にも泊りがけできてもらった。欧米人のマナーで会話にはいつもジョークを欠かさなかった。そして、誰にでもどんなときにも「なんの問題もありまへん、気にしないで」が口癖だった。「ノン・プロブレム、ネバー・マイインド」と首をふりながら繰り返すのが常だった。ただ満ちゃんは京都人だったから真に受けていいのかいつも迷った。
 有名商社マンだったから収入はすごかったと思うが、忙しすぎた。奥さんの事情で、いつか商社を辞めて大西洋上のラス・パルマスにいると聞いた。いちど国際電話をかけたことがあったけれどつながらなかった。満ちゃんはいま、どうしているのだろう。

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