2009年6月2日火曜日

いとこ会


 姑様は岩手県の山中の農家に生まれた。三人姉妹の真ん中。父親は早くに他界し、女手ひとつで育てられた。女だけの家族で苦労し、悔しい思いもしたそうである。なにがくやしかったかというと、戦時中のこと。
 ひとつは家族同様の農耕馬を軍用として供出しなければならなかった経験。別れるときの悲しそうで訴えるような目が忘れられないという。言葉に出せないだけ目が語っていたらしい。そして女だけの農家で農耕馬を失うということは打撃的であった。おそらく中国戦線につれていかれたのだろう、愛馬はふたたび帰ってくることはなかった。
 もうひとつは軍事教練。今では妻殿ぐらいの背丈はめずらしく無いが、学生時代は背の高さが目立った。母親である姑様は妻殿とほぼ同じ。戦前ではかなり大柄だったと考えられる。あまり敏捷な方ではない、むしろどちらかという動きたがらないタイプ。そこを軍事教官に目をつけられ、いじめられたらしい。二十歳にも満たぬ乙女だった姑様にはとてもおぞましい思い出として残っている。戦争なんてとってもいや、という実感をいつもおもしろおかしく真剣に語る。

 妻殿の母方のいとこさん達で毎年「いとこ会」を催してきた。姑様の姉夫婦は亡くなっていない。姑様夫婦と妹である叔母夫婦が毎回出席するが高齢になったということで、今年でとりやめるらしい。今月が最後の「いとこ会」になる。

 婿である私も最後でもあるし久しぶりに参加することにした。もうあまり会うことがなくなるかもしれないから。飲み、騒ぐ人たちではない、歌う(謡う)ことの好きな東北のよきいとこたちである。

 そうしたら秋の宮の「鷹の湯」にも寄ってこよう。「JR大人の休日クラブ・パス」を買いに行こう。

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