2009年3月24日火曜日

花桃のときめき


 何年にもなる。昔、善光寺さん詣でと温泉の一泊二日で一万円もしないバスツアーがあって、妻の両親も呼んで参加したことがある。そのツアーの2日目最後の道程で、山梨の「神代桜(じんだいざくら)」を巡ったとき、そこの路上で農家の人が花桃の苗木を売っていた。商品札の写真を見れば派手に花が咲くようになっていて、思い出にと買い求めた。バスの狭い座席の前に持ち込める程度の苗木だった。

 大昔、テレビの番組で「♪桜の苗が大きく育つころ、僕らはみんな大人になるんだ」で始まる木下恵介アワーというものがあった。あるとき、ホームセンターで桜の苗木が処分販売されていた。求めようとしたところ、店員さんにそれはへたっていると言われて別のものにした。それぐらい継ぎ木のたよりない細い苗木、いかにも売れ残り品という貧弱なものの中から求めた。だめもとで、うまく育てば我が家でも桜を楽しめると思ったからだ。

 この桜の以前に植えていた花桃は何年も花を咲かせなかった、ああ、みやげ物で一見の客相手のそんなものだったかなと、少しあきらめていた。

 あれから何年経っただろう。

 妻の両親も歳をとってもう東北の実家を出てくることができない。私もへこんだり、くさったりしながら、いい歳になった。

 『梅は咲いたか、桜はまだかいな』でつれあいははしゃぐ。そういう人とつれあっているので、私のへこみもくさりも何とかなっている。花桃も桜も蕾が膨らんだ。思えばよく育ったものだ。幹も枝もすっかりりっぱになった。リフォームして大きくした窓から、リビングに居ながらにして精一杯咲く花桃を楽しむことができる。昨年は孫の出産の手伝いに上京していた大学時代の女友達を招いて昼食会を催した。今年もみなを招こう。

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