2008年12月22日月曜日

30歳


彼女が引っ越してくるのが先で挙式が後になった。だから月足らずで第一子が生まれたとき、弁明に努めた。実際に予定日よりも1箇月早く生まれた。

「今日病院に行ったの?えっ、どこか具合でも悪いの?」「実は」というシーンを想像していたが、実際には全然ちがった。泣かれた。わたしの青春が終わった、と。確かに若かった。

一緒に暮らしてみてわかった。外で付き合っているときと違って、家では物静かだった。今では面影が無い。気を遣って好きなケーキを買って帰ったりしたが、食べたくないと言われた。経験がなかったので二人ともそういうことに気づかなかった。あのときはつらかったのに「オレのケーキが食えないのか」と言われたと、今でもなじられる。

里に帰ってお産をしたので生まれたときのことを知らない。職場にお姑さんから長距離電話があって「男の子だよ」と告げられた。そっと上司に報告したら、大きな声で職場のみんなに告げられ慌てた。わずか18人の職場だった。とても家族的だった。
 
指は五本あるか、五体満足か、聞いた。顔は似ているか、聞いた。なんだかこのオレに子どもができたなんて不思議だった。彼女からは赤ちゃんって顔はシワシワだと聞かされた。

妻が実家を引き上げるとき、迎えに行って初めて対面した。里は遠方で新幹線などを乗り継いで行った。口の悪い妻の同級生からは「はるばる汽車で来た」と言われた。あのころはまだ飛行機に乗ったことが無かった。

勢いよくミルクを飲み、泣けばのけぞって泣いた。動くものにはなんでも興味をもった。与えたおもちゃは分解できるものはみな分解した。

その後も私たちは子宝に恵まれ、そして今年子育てが終わった。

あれから今日で30年、驕(おご)らず正義の士として社会に役立ってくれればと希(こいねが)う。

0 件のコメント: