2008年7月13日日曜日

もくもくとした営みと信念

 そうは言ってもサンゴは白化して死んでいた。途中、色とりどりのサンゴが群生していたとは想像する海が続くが、案内されたポイントに行かなければ生きたサンゴは見られなかった。沖縄県恩納村の海。

 海流と地形の関係で近年のオニヒトデの大量発生元という悪名をいただいたらしい。漁協技術指導員の比嘉さんたちは実地に調べ対策をとった。12年周期で大量発生を3回繰り返した。海域におけるオニヒトデの親の個体数の密度を1,000以下にすることによって大量発生を防ぐメカニズムを発見し「産卵を防ぐ」という対策をとることにした。
 ところが行政は大量発生した場合これを駆除するという方式をとっている。発見し、申請し、対策の補助金を給付するという仕組みのため有効ではないという立場をとっている。いわば「お上にたてつく」やり方のため補助金もおりないらしい。

 サンゴの再生のため、サンゴの増殖設備を域内に3箇所持ち、サンゴ部会という組織を持つ。これも一度立ち消えになりそうになったらしいが、信念を持つ人がいてこれをもちこたえたらしい。サンゴの植え付けも試行錯誤があって実践を積み重ね、最近ではサンゴ礁跡に植えつけるよりも、少し流れのある海中に棒筒のようなもので支えてバスケット方式で置いておく方法(「養殖」という概念になる)が有効であることがわかってきた。一度植え付けてしまうとそれは動かしてはいけないものになるが、養殖方式だと漁協の財産で場所を適切なところに移し変えることができる。また固体を植え付けで増殖させるだけでなく、産卵をさせて自然の力で再生する方法も追求している。

 サンゴ再生の営みは、美ら海(ちゅらうみ)を守るという抽象的な事業だけでなく、この沿岸の漁場と養殖場(ここの養殖とは餌を与えない養殖で海藻養殖)を守ることに繋がっている。

 この漁協では、あと1℃、もう2℃高い水温帯に耐えられるサンゴやモズクの種をつくっている。今はその戦略もとっている。地球温暖化、水温上昇が深刻に進んでいる。いつか本土がサンゴ礁帯になりモズクの産地になって沖縄から買い付けに行く日が来るかもしれないという冗談を交わす。実はこの「冗談」は成り立たない。沖縄でサンゴが潰滅すれば、たとえ本土の水温が沖縄並みになったとしても生き物であるサンゴや地形としてのさんご礁は簡単には継承されない、そうなればモズクもつくれない。

 ここと提携する山陰の食品加工業者さんは、サンゴ増殖の事業に幾ばくかの費用を負担している。モズクを食べることが良心的な加工屋さんを通じて間接の間接的にサンゴを守る事業と活動を支えているらしい。食卓にあがれば、みんなが見果てぬ南国の海に想いを馳せることができるようになるとよいと考えた。
 
 グラスボートに揺られながら、上空を幾度も大型米軍機が通り過ぎるのを仰ぎ見ながら、もくもくと続けられる営みに思いを馳せた。

* 上の画像は恩納村の海、下の画像は増殖用のサンゴ。 
* 本日の『朝日』の2面に「造礁サンゴ 3分の1が絶滅危機」の記事が掲載されています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

昨夜のダーウィンが来たでも、サンゴの白化について、少し説明されていたけど、なかなか、日々の食卓から温暖化対策に繋がると、生き物との住みやすい地球になるという事まで、消費者には伝わらない。

匿名 さんのコメント...

僕は、オニヒトデ狩りをしたことがあるんですよ。いちおう昔はスクーバをしてましたから。
ほんとうにイヤな奴で、その頃からウジャウジャいやがった。あいつらが占有した領域はたちまちサンゴが死滅する。恩納村漁業がスゴイのは、これを自分たちの仕事とリンクさせていることです。うちの霞ヶ浦でもなかなかできない。わかっていても目先にはしる。儲かっていないから、後継者がいないから次世代に手渡すという発想が消えていっている。
第1次産業は、いい金儲けよう!そうすれば、自然が再生できる、と思いたい。